「ブッダ 最期のことば」こぼれ話
「ブッダ 最期のことば」こぼれ話

「『涅槃経』っていう2000年以上前の経典がまさか現代の私たちに『使える』テキストとは思わなかった」

司会の伊集院光さん、武内陶子さんが番組終了時にもらしていた言葉です。かくいう私自身も「涅槃経」という響きから、ブッダの死のありさまを荘厳に描きだした経典で、ありがたいけど、なんとなく「抹香くさい」感じの教えなのだろう…くらいに、たかをくくっていたのです。

ところが、「涅槃経」が仏教にとどまらない「組織論」に役立つものだ…という解説を、最初の打ち合わせのときに佐々木閑先生にうかがって、目からウロコがおちまくりました。

番組制作を終えた今、「涅槃経」を現代に読む意義について、私自身の解釈を交えての実感をあえて語ってみると、「涅槃経が説く組織論」は、今、世界を席巻しつつあるグローバル経済への対抗原理になりうるのではないかということです。

真理や生きがいを追究するサンガのような組織は、それ自体では経済的に成り立たないため、その追求のありさまを徹底して情報公開し、非の打ち所がないくらい立派な姿を一般社会に示していくことで、人々に理解を求めてお布施をいただくことで支えてもらう。こういう仕組みをもったからこそ、仏教は、世俗的な常識にとらわれない新しくて豊かな文化や芸術を2500年もの間生み出し続けていけた。こうした「二重構造」がブッダの組織論の中核だというのが、佐々木先生の説です。

これは仏教の組織だけでなく、真理の追究、芸術の振興、文化の育成等々、公共の利益を追求している現代の組織にも通じると、佐々木先生はいいます。

こうした組織が、純粋な経済原理からみて非効率なものととみなされつつあるのが現代です。特にグローバル経済の波にあらわれて競争が激しくなる昨今、こうした文化活動にかかる予算って年々削減されつつあるという話をよく聞きます。

もちろん厳しい経済状況の中で、財政の建て直しのために効率化をはかっていくことはある程度仕方がないことなのかもしれません。しかし、私は、ブッダの組織論が示す原点を忘れてはならないと思います。経済原理だけで全てをはかり、「文化」や「公共の利益」の領域を切り捨ててしまっては、「豊かな文化の苗床」を殺してしまうことになります。

佐々木先生は、ブッダの組織論を「ものさし」だとおっしゃっていました。それはもちろん理想であり、完璧には実現できないかもしれないが、みんなが心の中にもっておくことで、現状がどれだけ歪んでいるのか、理想から遠のいているのかをはかることができる「ものさし」であると。

私たちは、ブッダの組織論を「ものさし」としつつ、社会が偏った方向へ向かっていかないようきちんと監視していかなければならないのでないか? そんなことを強く思いました。

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以上 抜粋です。
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編集 えんさん : お返事遅れてすみません。freehandさんの日記などもよく読ませてもらってます。見識の高いお方のようで、これからもよろしくです。
編集 freehand2007 : この番組、朝の放送で見ていました.「諸行無常」につづいては、「自灯依、法灯依」の話が出てくるのかなーと、思いおりましたけれども.足跡からお邪魔させてもらいました.