子どもの空間:/6 寂しさを隠し 「マンキツ」拠点に出会い系
ついたてで仕切られた個室は44。薄暗く乾いた地下のスペースに空調の音だけが響く。

 受付で指定された「3番」の扉を開け、彼女はソファに腰をおろす間もなく携帯電話の充電を始めた。「電池すぐ切れますから」。飲み放題のメロンソーダとマンガ本12冊を2畳ほどの部屋に持ち込む。大みそかの前日、今日が「仕事納め」。

 JR目黒駅前のマンキツ(まんが喫茶)は1時間400円。「サポ」(援助交際)で稼ぐ彼女には格好の密室だ。渋谷や新宿は警察の目が厳しくなったから、最近はサラリーマンが多い山手線内の別の駅を拠点にする。

 携帯の出会い系サイトにプロフィルを登録する。<誰かお年玉くれる人いないかなぁ〓。東京/かおり/18歳/B型/体形ちょいぽちゃ>

 名前のほかにもう一つ、「うそ」を書いた。

 3秒後、最初の返信。それから10秒おきに携帯が震える。欲望の襲来。<お年玉いくらほしいんだぁい?>。24歳173センチ66キロ、23歳ユウヤ……。顔や胸の写真を添付する男もいる。最近は中年より20代が多い。「本当の彼女と付き合うのは気を使って面倒らしいですよ」

 <メールありがとう〓条件ゎ、ホ別3(ホテル代別で3万円)でゴム(有)ノーマルH1回かな♪>。同じ文面を次々返信する。<会ってまじ好きになったらどうしよう>。メールだと大胆な言葉も書けるらしい。「ほとんど妄想族ですね」。妻子持ちはお年玉で出費がかさむ時期だから、独身に狙いを絞る。

 入室して3時間。171通のメールが来た。

 待ち合わせは午後2時、マクドナルドの前に決まった。

 自称26歳アパレル社員の「まさと」は品定めするように彼女を眺め、2分前に現れた。軽く会釈。「お菓子買わない?」と男に言われコンビニへ。後ろ姿は恋人同士に見えるが、手はつながない。

 彼女がサポを始めたのは半年前だ。「初体験で、誰としても変わらないと感じたから」。高校は1年の2学期でやめた。クラスに仲のいい友達もいなかった。

 横浜で家族6人で暮らす。「普通の家庭ですよ。父親は会社員、母親はパート。幸せすぎてまひしちゃった、みたいな」。それ以上深くは踏み込ませない。派遣で化粧品の箱詰めの仕事もする。時給850円。親に「まともに働いている」と思わせるためという。

 父親は今年、定年を迎える。「親不孝してきたから、家にお金入れたい。うれしくない金かもしれないけど」

 警察に発覚し、携帯の顧客データを提出させられたことがある。18歳未満とばれ、客の教師らは児童買春で捕まった。「客を狩ってやりたい。警察に突き出せば、ウチみたいな寂しい子が減るし」。報酬でコートは買えるけれど、自分の何かがすり減っていく。

 ホテルに入り浴槽に湯を満たす間、決まって交わす会話がある。

 「想像より大人っぽいね」と男が甘い言葉をかけてくる。「じゃあ、いくつに見える?」。しばらく考えている男に、子どもっぽい声でささやく。「ウチ、17歳だよ」【鈴木梢】=つづく

 ◇急増する、まんが喫茶

 日本複合カフェ協会によると、05年9月現在でまんが喫茶やインターネットカフェは全国に2737店舗。10年には4100店舗を超える見通し。24時間営業で安いことから、娯楽の場として若者に人気が高い一方、密室でのパソコン利用による名誉棄損、児童ポルノ販売など、事件の温床にもなっている。

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毎日新聞 2007年1月7日 東京朝刊