2006年11月
2006年11月30日

--------------------------------------------------------------------------------

無効な定期借家契約
 仙台市でアンティ―クの雑貨のお店を営業している斉藤さんは今年の8月に建物を取り壊すので明渡して欲しいと言われた。突然の話しで困っていると家主はいきなりこの契約は今年の2月までの定期借家契約で期限が過ぎているので6ヶ月の予告で解約できると言ってきた。

 心配になってインターネットや本などで借地借家人組合と言う組織の存在を知って相談にきた。電話での相談で困難な面があったが、契約書などをファックスで送付したところ、定期賃貸借契約だという家主の主張には定期借家契約に必要な書面による通知がなかった。その上、家主の夫は宅建主任の免許をもっており、その仲介での契約であった。家主の代理人である弁護士からは」「定期借家契約に基いて、引き続き契約するならば定期借家契約。それ以外ならば明渡しを求める」との通知がきた。

 組合では斉藤さんと相談し「この『定期借家契約』そのものが借地借家法第38条2項の文書がないことで無効となり、通常の賃貸借契約であること。又、期限が過ぎての契約解除通告は無効である」と主張することにした。

東京借地借家人新聞より

 参考法令は「借地借家法」
 (定期建物賃貸借)
第38条 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り第30条の規定にかかわらず(注1)、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第29条第1項(注2)の規定を適用しない。


2 前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ(注3)、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。

3 建物の賃貸人が前項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。

4 第1項の規定による建物の賃貸借において、期間が1年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の1年前から6月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から6月を経過した後は、この限りでない。

5 第1項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が200平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から1月を経過することによって終了する。

6 前2項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。


 (注1) 借主の権利を保護する強行規定である借地借家法26条の「法定更新」及び28条の「正当事由」の規定が適用されないことを明確にしたもの。

 (注2) 借主にとって不利益な契約ということで借地借家法29条1項で禁止されている1年未満の契約も定期借家契約では認めるとしたもの。

 (注3) 書面の交付とは、定期借家契約を締結する前に賃貸人は契約書とは別に定期借家契約であることを充分認識させることが出来る書面を「あらかじめ」借主に現実に引き渡していなければならないということである。

 そして賃貸人自身が直接、「契約は更新がなく、期間の満了により建物賃貸借が終了する旨」が記載された書面交付した上で定期借家契約であることを借主に理解出来るように説明する必要があり、賃貸人の説明義務である。これは宅地建物取引主任者による重要事項の説明義務とは別物でり,重要事項の説明で代用することは出来ない。

 なお、第38条3項にあるように賃貸人本人が説明義務を履行していないときは、定期借家契約中の法定更新及び正当事由排除特約の部分だけが無効とされ、契約全体が無効になる訳ではない。この場合建物賃貸借は法定更新及び正当事由が適用される普通借家契約として有効に成立する。

 �@果して、定期借家契約の期間満了後になされた賃貸人の定期借家契約終了通知が有効なのかどうかである。
 先ず定期借家契約を期間満了と同時に終了させるには、借地借家法第38条4項から期間満了の1年前から6ヶ月前までの間(この6ヶ月間を「通知期間」という)に期間満了により賃貸借が終了する旨を通知しなければならない。この通知請求をしない場合は、期間満了と同時に定期借家契約の終了を賃貸人は主張出来ない。
 ただし、「通知期間」後から期間満了日前までに終了通知を請求した場合は、通知日から6ヵ月後に定期借家契約は終了する。

 �Aでは、期間満了前までに賃貸人が定期借家契約の終了通知をしなかった場合は、どうなのか。
 その場合、賃貸人は、もはや定期借家契約の終了を賃借人に請求することは出来ない。「その結果、定期借家契約における「定期特約」は、事実上、消滅して期間の定めのない通常の賃貸借契約が継続することになります。」(「QA あなたの借地借家法」東京借地借家人組合連合会編 「別冊 Q&A 定期借家契約」19頁)即ち、「期間の定めのない普通の借家契約になる」というのが東京借地借家人組合連合会顧問弁護団の見解である。
 従って、借家契約を解除するには賃借人に正当事由が必要であり、最終的には裁判所の判断に委ねられる。(N)


台東借地借家人組合 
無料電話相談は03−3821−6043
受付は月曜日〜金曜日(午前10時〜午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。



2006年11月27日

--------------------------------------------------------------------------------

80歳を超える借地人には無理難題な契約条件を強要
 台東区根岸に住むGさんは、80歳を超える年齢で、既にご主人に先立たれ、子供もいない全くの単身生活である。50坪の借地の殆どを駐車場及び倉庫として賃貸し、その賃料が生活費になっている。

 3月末借地契約が満了し、その更新に際して地主から新しい契約条件を提示された。その内容は�@地代は月当り15万円を4万円値上げの19万円に改定する�A更新料は500万円とする�B特約として相続を認めない契約者本人一代限りの契約とする、というものであった。現在の暮らしからはとても金額的に呑めるような条件ではなく、一人途方にくれていた。

 近所に住み日頃身の回りの世話をしている姪御さんがこの話を聞きつけ借地借家人組合に相談し加入した。その後、地主代理人の弁護士から話合いをしたいとの申し入れがあり、Sさんはご高齢なので姪御さんが組合指導の下に代理交渉に臨み、提示された3点には応じられない旨を伝え、従前の契約内容で更新したい意思も伝えた。

 しかし、地主側弁護士は3条件を呑んで貰えないのであれば更新に応じられないという態度を崩さず、話合いは物別れに終った。

 その後、取敢えず、4月以降の地代を地主に送金し、加えて借地法4条に基づく「借地更新請求」を配達証明付き内容証明郵便を送り付けた。

 今後の対応は組合の顧問弁護士と相談しながら進めていくことを確認した。


台東借地借家人組合 
無料電話相談は03−3821−6043
受付は月曜日〜金曜日(午前10時〜午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。



2006年11月25日

--------------------------------------------------------------------------------

家賃3万円の値下げ
店舗の更新料と手数料がゼロに


 東上野で居酒屋を営業している望月さんが組合へ電話をかけてきたのは、11月末のことであった。契約の更新を不動産屋が言ってきた。だが、家賃を5千円値上げするという内容。この不況下に値上げは呑めない。不動産屋は、契約更新の条件として家賃は15万5千円に、更新料は家賃の2ヶ月分、更新手数料は家賃の1ヶ月分、それぞれに消費税、契約期間は3年を提示している。

組合としては不動産屋を除外して、家主に直接交渉して家賃減額を実現するのが近道とアドバイスした。

家主との交渉時、望月さんは、法定更新制度の説明をし、既に契約は更新されているので更新料の支払いの意思がないことを言い切った。更に、固定資産税・都市計画税も上昇していない。寧ろ、毎年下がっているのが現状だ。坪1万円の家賃は高すぎる。組合で調べてもらったら近隣店舗の相場は坪8千円ということだ。

それに今回から家賃に消費税をかけているが、家主は非課税業者の筈だ。もし課税業者なら『消費税課税事業者届出書』を提示してもらいたい。それでなければ、家賃の便乗値上げなので消費税分は支払わないと付け加えた。

 交渉の結果、更新料・更新手数料『0』、家賃は3万円減額、消費税も無しでOKになった。契約書がないと店舗改装資金の借入が困難なので、契約書は必要だった。そこで、家主には、法定更新しているのだから契約書は不要だが、そちらも不安でしょうからと契約書を作らせた。


台東借地借家人組合 
無料電話相談は03−3821−6043
受付は月曜日〜金曜日(午前10時〜午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。



2006年11月23日

--------------------------------------------------------------------------------

建物の老朽化を理由に明渡請求
 台東区蔵前地区に20数年前より共同住宅形式の店舗併用住宅を借家しているKさんの元に家主の代理人より内容証明郵便が届いた。他の共同住宅の10名の借家人にも同一内容の内容証明郵便が届けられていた。それは設計事務所の鑑定書を添付したもので、建物の老朽化が激しいためにガスの配管・電気の配線が修理不能で危険な状態なので借家契約を中途解約するので6ヵ月後に明渡して欲しいとの内容であった。

 入居者は永年地元の固定客を相手に居酒屋・飲食店・印刷所・雀荘等を営業しており、突然の明渡請求に困惑してしまった。

 その後、民商の役員の紹介で入居者は借地借家人組合に加入した。取敢えず、組合役員の指導の下に書面より家屋は未だ使用に耐えられる状態にあり、契約の中途解約には応じる意思のない旨を伝えた。

 すると、その後代理人から入居者にその件に関して面談したいとの要望があった。組合員は事前に班会を開き、移転しての営業は難しく、住み慣れた当地を離れたくないとの各自の意思を確認した。そこで今後は組合役員と班長を窓口にして話合いに臨むよう対応が固まった。

 Kさん達は組合役員の説明を受けて、家主には建物明渡請求に関する正当事由がなく、居住者は従来通りに営業と居住が出来ることを知り安堵した。


台東借地借家人組合 
無料電話相談は03−3821−6043
受付は月曜日〜金曜日(午前10時〜午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。



2006年11月22日

--------------------------------------------------------------------------------

更新後の借地期間を契約書に10年間と記載される
借地の契約期限を10年と地主記載

 練馬区旭丘で借地して40年を経過した酒井さんは、この10月で期間が満了し、更新の時期を迎えた。 地主から今回、更新後の契約書が送られてきた。契約書案には、その第2条で、契約期間を10年とするというものであった。

 組合の新聞その他で、借地借家法が改定される以前に契約したものは旧借地法が適用されると聞いていた酒井さんは、心配になった組合事務所に相談に来た。

 組合では、酒井さんが賃借している借地は旧借地法が適用されること並びにその期間については20年以上とすること。それ以下の期限を定めた場合はその条項は無効となり、期限の定めのない契約となって、堅固でない木造の場合は20年となることを説明した。(*)

 相手の地主は、平成4年に施行された借地借家法で2回目以降の更新は10年とするという条項を勘違いして契約書に記載してきたものと考えられるとし、相手の地主に通知することにした。

 酒井さんは「これで安心しました。ゆっくり眠れます」と話した。

 東京借地借家人新聞より


台東借地借家人組合 
無料電話相談は03−3821−6043
受付は月曜日〜金曜日(午前10時〜午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。


2006年11月19日

--------------------------------------------------------------------------------

賃料減額で和解
春日部で和菓子の製造販売を行っている宮地さんは、2年前に司法書士を代理人として減額請求をしたが、成果はなかった。近隣並みの賃料にしたいという希望で組合に入会した。

 賃料減額については双方の合意が必要なこと。出来ない場合は調停を行い、合意が出来ない場合は、裁判で決着することなどを説明した。

 相手は弁護士を代理人にして、「近隣の相場と比較しても高くない」と主張した。宮地さんは知合いの不動産業者の資料などもとに高額であると主張したが合意できず、不調に終わった。裁判で決着をつけることにし、組合の援助で裁判所に賃料減額の裁判をおこした。同時に「話合いで合意したいと言うならば応じる用意があるが、だめならば鑑定の申し出を行い、判決をもとめる」と通知した。

弁護士はここにきて賃料減額に応じ、4万円の減額を申し出た。不服はあるものの宮地さんは合意に応じ和解。

「弁護士も使わずに一人で調停、裁判までできたのも組合のおかげです。ありがとうございます」と宮地さんは話した。


 東京借地借家人新聞より


台東借地借家人組合 
無料電話相談は03−3821−6043
受付は月曜日〜金曜日(午前10時〜午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。


2006年11月16日

--------------------------------------------------------------------------------

地上げ業者が借地人にしつこく底地の買取要求
 相続で業者が底地を買収
        底地の買取請求には資金が無いと断り続ける

  豊島区目白に借地している島田さんの底地は、平成16年に地主が相続のために業者に売買した。その後、代理人として大阪のA業者が訪問し「この地域の更地価格は200万円する5対5で買取れ」と迫った。Aさんは怖くなって組合に入会した。

 借地の売買及び契約については組合を窓口にして行うことを通知した。業者は底地の売買について、7対3にするなどの案を提案してきたが、島田さんは、このまま借地として住み続けたいし、買取る資金もないと断ることにした。

 その後、業者は1年以上にわたって、組合事務所に地代の集金にきて売買の話を持ち出したが、折り合いはつかなかった。いつのまにか担当者が替わり、島田さんに面会を強要するようになった。「いるのはわかっているんだ」「はやくでてこい」などと声を荒げて何度も戸をたたいた。ただちに警察に通報するよう指導し、現場に出向いた。今後は、警察などと連絡を密にし対応することにすると共に必要ならば法的手段も検討することにした。

 東京借地借家人新聞より


台東借地借家人組合 
無料電話相談は03−3821−6043
受付は月曜日〜金曜日(午前10時〜午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。


2006年11月14日

--------------------------------------------------------------------------------

家主の明渡請求を断念させる
       突然訪問し3時間も粘る家主の
       明渡請求を断念させた

 国分寺市並木町に住む田中さんは夫婦と長男の3人家族。2年前の04年5月に木造2階建4DKの貸家を家賃月額10万円、敷金2か月分、礼金1か月分を支払って契約した。

 去年の夏に家主が突然死亡し、5月の初めに家主の奥さんが突然訪ねてきた。新しい家主となった奥さんの話によると、ご主人の入院先が遠いため転居したが、主人が亡くなったので元の家に住みたいので退去して欲しいとのこと。契約は更新しないと言ってきた。

 田中さんは、契約更新間際になって突然言われても出て行くことはできないと断ったが、3時間も粘られて一方的に話をされ、ほとほと困ってしまった。

 田中さんは、インターネットで検索し、立川市に組合があることがわかり、早速に相談に行った。

 「家主は解約するには1年前から半年前まで解約の通告をしないと契約は従前と同一の条件で更新される(借地借家法第26条)ので、明渡しの話には一切応じる必要はない」とアドバイスを受け、今度家主と会う約束をしているのであれば、面会を断り、「今後の交渉は組合に任せている」と伝えることにした。

 家主から早速組合に連絡が入り、電話でのやり取りだけだったが、今回の明渡しを家主は断念。

 この度、更新契約書の作成を求めてきたが、契約書の内容が前より借主に不利であるため突き返すことにした。


 東京借地借家人新聞より


台東借地借家人組合 
無料電話相談は03−3821−6043
受付は月曜日〜金曜日(午前10時〜午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。


2006年11月11日

--------------------------------------------------------------------------------

ペット可のマンションで犬の鳴声が喧しと僅か2ヶ月で契約を解除される
犬を飼いたくて、ペット可のマンションを探し当てた。家賃6万9000円、礼金2ヶ月、敷金3ヶ月の計34万5000円を支払い今年5月に引越しを完了した。

 ところが入居してすぐに家主から複数の他の入居者から犬の鳴声が喧しいと苦情が出ているので契約を解除する。7月末までに部屋を明渡して欲しいと通告された。納得できないまま7月末でマンションを退去した。

 8月中旬、不動産屋から敷金の清算書が届き、室内クリーニング代・床張替等の原状回復費が差引かれ、8万5800円が返金されることになっていた。僅か2ヶ月で契約を解除され、高額の費用を負担させられ、何とも納得がいかない。

 インターネットで組合を識り、相談した。組合は、引越費用、仲介手数料等は別途請求することにして、取敢えず、34万5000円を少額訴訟で取り返すための準備をした。


 東京借地借家人新聞より


台東借地借家人組合 
無料電話相談は03−3821−6043
受付は月曜日〜金曜日(午前10時〜午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。