時代が変わると、マナーも変わる
 わが家ではここ最近、夕方になると必ず電話がかかってくる。電話の主は、大学生
と名乗る若者達だ。私が電話に出るとその若者達は「私、○○大学の××と申しま
す。今大学の仲間と子ども達に勉強を教えるためのサークルを作って活動しているん
です。別に家庭教師の勧誘をしているわけではないんです。ただ、今のお子さん達に
勉強の仕方とかポイントとかを教えてあげたいとので。」と殆ど同じ内容の事を言
う。

 しかし、そう語る若者の背後からは、どこかのコールセンターから電話をしている
らしい、大勢の人が同じマニュアルに従って電話をかけているらしい雑音が聞こえい
る。この状態のどこが大学のサークル活動なんだといいたくなる。私の学生時代に
は、家庭教師の生徒は、大概は知り合いからの口コミや、郵便局などに無料でチラシ
を貼らせてもらって募集をしたものだ。この電話が、どこかの家庭教師紹介所がやっ
ていることなのだとしたら、なんと効率の悪い宣伝方法だと私は思う。母親という立
場から言わせてもらえば、家庭教師として子どもの勉強をみてもらうということは、
子どもを任せるということになる。しかも、家庭教師なら自宅に招きいれることにな
る。すぐにうそだとわかるような言葉で勧誘をしてくるような不審人物に、家庭教師
の依頼をすることはありえない。それどころか、主婦の一番忙しい夕飯時に時間を割
かれるという迷惑行為として、文句を言いたいと思うほどだ。

 しかし、これも事が緊急を要しているわけではなく、何度となく同じような電話が
来ているので、「あ、またか」と思って冷静に対処が出来るのかもしれない。数日前
には、中学3年生を含む数名の若者が、「オレオレ詐欺」の容疑で逮捕された。ま
た、先月震災にあった新潟の被災者関係の方々にも、同じような手口で被害あわれて
いる方がいるという。これらはみな、家族だからとか関係者に関することだからとい
うことで、電話をかけ来た人物の身元を良く確認することなく、慌てて対処をしてし
まった結果、事件が起こっている。

 これらの状況を受けて、最近では電話の受け答えに関してのマナーが変わってきて
いるのだという。少し前までは、まず電話を受けたら、「はい、○○です」と自分の
姓を名乗るものだったが、最近は「ハイ」とだけ言って、名前を名乗ってはいけない
ということになったらしい。そのために、電話をかける側も変わってきた。相手が
「ハイ」と電話に出たら、まず「○○さんのお宅ですか?」と確認をしてから、自分
の名前を名乗るようにするのが正しいマナーだという。実は私は、この電話に出た
ら、「最初に『ハイ』とだけ言う」ということに馴染めず、無意識のうちに名乗って
しまうことが多かった。しかし勧誘の電話が急増してから、横で電話の応対を聞いて
いた夫に、「電話に出たら、絶対にこっちの名前を名乗っちゃだめだ。余計な情報を
相手に与えることになるだけだぞ」と念を押され、意識をして名乗らないようして、
例え明らかに子どもからの電話だとわかっていても、必ず相手に名乗らせるというこ
とを徹底している。

 まあ、オレオレ詐欺の犯人達が、マナーに乗っ取った電話のかけ方をしてくるとは
思わないが、家族同士でもきちんと相手の名前を確認しあうことで、詐欺に合わずに
済んだという人の話も聞いている。最近は、犯罪もだんだんと手口も巧妙になってい
るので、そんな簡単な方法で、防ぎきれるわけではないと思う。しかし、顔の見えな
い相手からの情報は、相手の素性も情報の内容もきちんと確認をする癖をつける。こ
れは身を護る一つの方法として有効なことだと思う。
- 2004.11.17 オリーブニュ-ス掲載原稿 -