少子化時代のこどもと社会:誰が社会を支えていくのか
5日に厚生労働省が公表した人口動態統計(概数)によって、1人の女性が生涯に産
む子供の数(合計特殊出生率)が、1・32(前年1・33)で過去最低を記録した
事が分かった。つまり、また少子化が進んだ事になる。

少子化の原因としては、女性の高学歴化に寄る出産年令の高齢化、育児休業などの制
度の遅れなどいろいろと上げられている。だが、一番の原因は、日本という国が子ど
もの育てにくい国だからではないだろうか? 欧米諸国でも、少子化の進んでいる国
があり、それぞれの国で育児休業法を改定するなどの対策を取っている。その結果、
フランスは少子化に歯止めをかけることに成功した国もあるが、アメリカのように、
少子化などどこ吹く風といった国もある。それではなぜ、育児休業法の整備が同じよ
うに進んでいる国のなかで、少子化に歯止めを掛けられた国と、相変わらず進んでし
まう国があるのだろうか。

それは、それぞれの国の、育児に対しての社会の考え方が違うのだ。フランスとアメ
リカ、どちらの国も男性が育児や家事に従事することが当たり前の国であり、社会も
子どもに寛容である。しかし、「男は仕事、女は育児や家事をするものだ」という認識
が高いドイツや日本では、まだ育児や家事に従事する男性も少ない。その結果、男性
の育児休業取得が認められても、社内の目を気にしてなかなか取得する事が難しいの
が現状だ。電車などの公共の場で、子どもがぐずった時の母親の肩身の狭さは想像以
上のものがあり、ベビーカーで街を行けば立ち往生するばかりである。つまり、日本
という国は、子持ちに冷たい国なのだ。

私は、昔から子どもが好きだったので、3〜4人産もうと思っていたが、実際育てて
みて、2人育てて行くのが限度だと感じた。景気の低迷によって落ちこむ収入、それ
に反して増加する一方の教育など経済的な負担もかなりのものがあるからだ。そのた
めに子どもを預けて仕事に出る母親も多いが、ココでも子持ちの女性に対して社会は
冷たい。子どもが熱を出したり、学校などの行事がある度に仕事を休まなければなら
ないからだ。最初に「子どもが病気の時などには休んでもよい」という条件で採用し
てもらっていても、度重なれば職場の人の目が気になり、最終的に仕事を辞めざるを
得なくなることも少なくない。中には、「子どもを預けてまで働かなくても!」と、
親戚に詰め寄られた人もいる。そして、こういう場面で夫にかばってもらったという
話しもあまり聞かない。

すでに高齢化が始まっている日本の社会のシステムを、維持していくために必要な税
金や社会保険料をまかなっていくには、女性の労働力は必要不可欠なものであるはず
だ。しかし、現状のまま「育児は母親がすべきである」という社会通念を持ったまま
では、育児の負担も経済的な負担も、全て母親だけが追わざるを得ないことになる。
その結果、小さい子どもを持った女性の就労は困難を極め、それを目の当たりにした
若い女性達は、結婚や子どもを持つことを嫌がるようになるのだ。

現に私の周りでも、上記のような理由で、結婚をためらったり、子どもは一人いれば
充分だと思っている人が沢山いる。日本の社会全体で意識の改善を行わない限り、少
子化に歯止めをかけるのは難しく、将来日本は、社会のシステムを維持して事が出来
なくなるのではないだろうか。