春の目覚める時
日本のように四季がある国に住んでいれば、毎年春はやってくる

でも、その年によって春の訪れ方が違うのだ

今年の春はいつもより少し寝坊だった。
お彼岸が過ぎてもまだコートが手放せない日が続き、桜の開花予想日も先に延ばされた

仕事が込んでいた私は、その寒さを口実に、あまり表に出ることもなく過ごしていた。

そんなある朝のこと、公園の片隅の木蓮の花がひっそりと咲いた

その白く気高く凛とした大きな花を目にした日の午後、突然春がやって来たのだ

朝方の寒さはどこにもなく、暖かくてキラキラとした春の日差しが街を包み、こぼれんばかりに膨らんだ桜やゆきやなぎが一斉に咲き始めたのだ

それはまるで、木蓮が咲くの待っていたかのようだった

まるで、自然の織り成すイリュージョンを見せられたような気持ちだった

もしかしたら、あの木蓮の花の中に春の女神が眠っていたのかもしれない

最近はなにかと気忙しく過ごしていて、いつのまにか季節が変わってしまっていることが多かったのだが、春が目覚める瞬間に立ち会えたことが、私はすごく嬉しかった