子育て回想記 1
最近、オムツの宣伝で、「ハイハイ赤ちゃんのオムツ替えに苦労したことのある人!」というキャッチコピーがある。

家でも、ハイハイをする時期のオムツ替えで、とんでもないことがあったのだ。

あれは、もう10年くらい前のこと。息子がちょうどハイハイをはじめた頃のことだった。

家の主人は、育児も家事も殆ど手伝ってくれたことがなかった。

そのため娘の育児は、お風呂もなにもかも私一人でこなしていた。

しかし、2年後息子が産まれ、ようやく子供をお風呂に入れてくれるようになったのだった。

ところがある時主人が風邪を引いてしまって、お風呂に入れないので、私が二人の子供をお風呂に入れることになり、お風呂から上がった子供を受けとってもらうことにした。

息子はその頃、お風呂ではまだきちんと座っていられなかったので、取り敢えず先に息子を洗って、入れ替わりに娘をお風呂に入る。

すると、居間の方から…。
「ああ〜、こら〜〜」という主人の悲鳴に近い叫び声と、息子の鳴き声がして来た。

「どうしたの?」と私が、お風呂場のドアを開けて顔を出そうとした。当時は、狭い団地に住んでいたので、お風呂から顔を出せばすぐ横の居間が見えたのだ。

すると、今出したばかりの息子を抱えた主人が飛んできて。
「ごめん、もう一度こいつからだ洗ってやって。オレが「良い」って言うまで、お風呂から出てこないで!」と息子を押し付けるようにして行ってしまった。

泣きじゃくる息子。いったいなにが?

しばらくして、そろそろ上がらないと、湯当たりしてしまいそうになった頃、ようやく主人から許可がでた。

「いったいなにがあったの?」と聞くと。

私から受け取った息子の体を拭いて、オムツをさせようと寝かしたのだが、普段オムツを替えたことがないだんなは、手際が悪く、なかなか上手くオムツが付けられないでいると、息子がおしっこをしてしまったのだという。

慌てた主人が、思わず言った「ああ〜、こら〜」という声に驚いたム息子は、泣き出して、そのままおしっこをしながら、ハイハイして、居間を逃げ廻ったのだという。それで、居間の床も用意しておいたパジャマも、みなおしっこがかかってしまったらしい。

そのため、主人は一人で居間の床を掃除して、着替えを用意したのだという。

赤ん坊は、泣くとお腹に力が入るので、それだけで、おしっこがでてしまうときがある。ましてやその状況では、床はかなりビショビショだったらしくて、一面新聞紙が敷き詰めてあった。

今のように、パンツ型のオムツが普及していなかった時代の生んだ悲劇だった。

主人もも時々、オムツの宣伝が流れるとその話を思い出すらしい。「ほんと、あの時は参ったよな〜」と苦笑しながら言っていた。