紫のバラの花
食卓の上で、花瓶にいけられた、きれいな紫色をしたバラの花が揺れている

私にとっては、この紫色のバラの花は、思い出の花なんだ。

今から、15年前の今日。私は、25本の紫色のバラの花束と一緒に、ある言葉をもらったんだ

「オレと一緒になってくれる?」

そう。あの日、主人はこの花と一緒に、プロポーズの言葉をくれた

それから、15年。

本当にいろいろなことがあって…

あの日、この花を受けとってしまったことを、心の底から、後悔した日もあった

でも、今日。またこの花を見ることが出来て。

諦めずに、頑張って来てよかったな!って、思う。

主人は今朝、「お誕生日オメデトウ」という言葉も

なにも言わずに、なんか、そっけなく出掛けて行った

もう、お誕生日だからといって、大騒ぎして喜ぶ年ではないけれど

「おめでとう」の言葉もない、お誕生日の朝を送りだして

「なんか淋しいな」と思っていた

そして、仕事や家事でいつものように慌しく時間が過ぎて

夕飯の支度をするために台所にいた私の横に

主人が、黙ってそっと差し出してくれたのが

この紫色のバラの花束だった

私は一瞬、何も言葉が出なかった

「覚えていてくれたんだ」と思っただけで、嬉しかった

少し遅れて「ありがとう」と言う私に向かって

「あの時とは違って、お金がなくて、4本だけしか買えなかったけどね」と、

苦笑いしながら主人が言った

そっか、あの15年前の日のことも、ちゃんと覚えてくれていたんだ…

暖房を焚いた部屋の中では、バラはすぐに散ってしまうだろう…

そうしたら、散った花びらを集めて、押し花にでもしようかな?

夜更けの居間で、一人でバラを眺めながら、ニヤニヤとしている私だった