マンションに鬼が来る
我家にも、数年前まで節分に鬼が来ていた。

これは、子供達が通っていた学童ホールのOB・OGの保護者の方が、有志で節分に鬼の格好で訪問してくれていたのだった。

始めは、もう10年前くらいのことらしいが、その当時学童に通っていた子供達の家を廻っていたらしい。子供達が学童ホールを卒室しても、有志の鬼は廻っていた。もう年中行事と化していたのだ。

かなり派手な自前のお鬼の衣装で、街中の学童の子供達の家を廻っていたため、途中で交番のおまわりさんに呼びとめられたことも何度もあったという。

しかし、そのうち”鬼”の子供達が成長し、行く先々で、まるでマシンガンのような豆攻撃に遭うようになり、その度に鬼は泣いたり逃げ出したり…。一時は、もう止めようかと思ったこともあったらしい。

我家の子供達が学童ホールに入室したのは、丁度そんなころだったらしくい。鬼担当の御父さんから、「もし良かったら、鬼が廻っているんだけど、どう?」と声を掛けられた。

鬼にとっては年中行事と化しているのに、肝心の廻る先が無いのだという。当時内の娘が1年生、息子は保育園だったので、喜んで鬼にきてもらった。そうして、鬼は、自分の子供達の後輩達の家に廻るようになった。

玄関から、大きな掛け声と共に乱入してくる”鬼”に向かって、子供達はちょっとビクビクしながらも、一生懸命豆を投げる。すると”鬼”はその勢いに降参して、最後には降参した証拠に一緒に写真を撮って仲直りする。というストーリである。

当時保育園に通っていた息子は、鬼が来るまでは、元気良く「やっつけてやるんだ!」などと言っていたにも係わらず、鬼が来た途端に、泣きながら押入れに逃げ込んでしまって、鬼がいくら声を掛けても最後まで出てこなかった。

それから数年が経ち、学区内に大きなマンションが数棟建った。すると、鬼は引っ張りだこになり、各家庭には廻り切れなくなってしまったために、マンションの集会室を借りて、合同豆まき会が開かれるようになった。

今年も鬼は、自前の派手な衣装で、おまわりさんにうさんくさい顔をされながらも、意気揚揚とマンションの集会室に、子供達にやっつけられにやってくる。