黒豆
母が元気だった頃は、いつもおばあちゃんと母と2人でおせち料理を作っていた。特に母は八つ頭を煮るのが上手かった

私はお掃除をしていたので、どうやって煮物を上手に煮るのか私はよく知らなくて、いつか教えてね!って言っていたが、そのうち父が脱サラで商売を始めて

31日まで営業していたので、必然的にうちでおせち料理を作らなくなり。母の八つ頭もお正月の食卓に上らなくなってしまった

そして私はついにその煮方を教えてもらうチャンスを逸したまま、母は他界してしまった

何回か、自分で本を見ながら煮たことがあったが、どうも上手くいかず・・・私は八つ頭を煮るのは諦めたのだ

子供が小さい時は、おせち料理を作っても誰も食べてくれないので、余り作らなかったが

うちの渋い趣味の息子は、やけに煮物が好きで。ともだちの家で食べた黒豆をやけに気に入り。私にも煮てくれと言い出したのだ

買ってきた黒豆では気に入らないらしく、箸もつけようとしない息子・・・

しかたがない、今年は頑張って煮てみるか?と黒豆を買いに行ってビックリ

息子が好きな丹波の黒豆は、普通の黒豆の何倍も値が張るのだ

え〜〜。こんなに高い材料費かけて、煮るの失敗したらどうしよう・・・・

私はお店の前を行ったり来たりしながら、散々考えて・・・・

「煮てあげるって約束したんだから!!」え〜〜い、もう清水の舞台から飛び降りたような気分で、その丹波産の黒豆を買ってきた

それからが大変。上手に煮る方法を聞きいて歩いて、煮方は大体分かったけど・・さて、本当に上手にできるかな?

台所で黒豆の袋とにらめっこするたびに、なんか緊張してきて冷や汗が出てくる気がする・・・いや、まけちゃいかん!(ん?何にだ?)

そして今日、意を決して黒豆にとりかかる・・・

最初は少し不安だったけど、ん?なんかいい匂い・・・

掃除したてのピカピカの台所に、ホコホコと立ち上る湯気と、三温糖の甘い香り・・・

なんか懐かしいな、これって、私が小さかった頃の大晦日の匂いだ!

なんか湯気の向こう側に、母の笑顔が見えたような気がした

コトコトとじっくり煮込んで、どうやら黒豆が煮あがってきた、さてさてあの息子の評価はどうでしょうか?