桜に思う・・・母
三月に入り、もうそろそろ桜の開花予想日も発表されると思う

今年は温かい日が続いているので、今年はいつもより桜が咲くのも早いかも知れない

私は桜の開花予想日を聞くと、母のことを思い出す

母は、お産するとき以外は入院したことがないのが自慢の人だった

決して丈夫な人ではなかったけど。手術ばっかりしてて、入院ばっかりしてた父のことを、皮肉って、母はよくそういっていたのだ

初孫だった娘をこよなく愛してくれていた。初節句のお雛様を買いに出かけた時も

手が痛いと言いながら母はずっと娘を抱っこして、私は空のベビーカーに荷物をのせて押していたくらいだった

だがその直後、母は風邪で寝込んだ。娘が産まれたばかりで、まだ半年の乳飲み子だったため。私は、母の看病にも行けずにいた

そうこうしているうちに、急に入院することになった。娘の初節句のお祝いの日だった

風邪だと思っていたのはなんと、白血病だったのだ
余命3ヶ月といわれた時。私は目の前が真っ暗になった。でも、母にはそのこと知らせることが出来なかった

病院ということもあって、乳飲み子の娘を連れていくことが出来ず、でも母乳しか飲まない娘を長く人に預けることも出来ず

私は、目の回るような忙しい日を送ることになった

抗がん剤の治療の為に、無菌状態になることになり、母の病室は殺風景そのものだった。外部からは何も持ち込むことが出来なくなったからだ

そんな病室の中で、母は窓の外の桜の蕾が大きくなるのだけを楽しみにしていた。きっと、桜の蕾と娘の姿を重ねていたに違いない

そして、桜が咲く頃にはきっと退院できると信じていたのだ

でも、入院してから、わずか一ヶ月。最初の抗がん剤の治療が終わるか終わらないかというときに。母の病状は急変し、帰らぬ人となってしまった

その日は桜の開花予想日だった。でも、その日はまさに寒の戻りともいう感じの寒い日で。桜は咲かなかった

3月28日のことだった。それから毎年、私は桜が咲くのを待っている

せめて命日に、墓前に桜の花を供えたいからだ。母がなくなって10年もの間その願いは叶なかったが

昨年やっと間に合って、墓前に桜を供えることが出来た

今年も供えて上げられるかしら?と今からワクワクしている