コラボレーション
コラボレーションという言葉を最近良く耳にする。コラボレーションとは、「共同作
業」とか「共同製作」という意味である。特に最近では、普通に考えたらあまり一緒
に作業をすることはないと思われる人達、いわば異色な顔ぶれでの共同作業の場合に
良く使われているようだ。

私が良く買い物に行くスーパーでは、昼間は主婦パートさんがレジを担当し、夕方か
らは地元の高校の女子高生のアルバイトにバトンタッチする。休日は、その両方の人
達が交代で担当している。年中無休のそのスーパーは、パートに入ると土日のいずれ
かを出勤しなければならないせいか、パートさんの殆どが、50代以上の子どもを独立
させたくらいの年令の人達である。片や高校生の方は、茶髪でお化粧やピアスをして
る子も珍しくない、いわゆる「近頃の女子高生」といった感じである。

毎年、春の新入学のシーズンになると、新高校一年生だと思われる女の子達が、パー
トの方に教えてもらいながらレジの補助をしている光景が見られるようになる。夕食
の買い物客でごった返しているレジで、テキパキとした中高年の主婦パートさんと、
ぎこちない手つきの高校生のアルバイトの女の子がペアを組んでいる。教えるパート
さん達は、女子高生達が何か失敗しても、大らかに受けとめて余裕を持って指導して
いる様は、微笑ましい光景である。

そして、そろそろ学年末を迎えようという今頃の季節になると。高校生達は、すっか
り仕事に慣れ、余裕すら感じるようになる。時折、クレジットカードなどでのレジ決
済の方法がわからなくなったパートさんが、女子高生に教えてもらっていることもあ
る。「仕事」と言うこともあるのだろうが、教えてもらっているパートさん達は、
「年を取ると、物忘れが酷くて駄目ね。助かったわ、ありがとう」と、高校生に向っ
て丁寧にお礼を言っていた。

また、交替の時間になってもお客さんが途切れず帰れないでいるアルバイトの子のと
ころに、パートさんが飛んで来て、「後はいいから、早く帰っていいよ。おつかれ様
でした」という場面にも何度も出くわした。お互いが、お互いのことを良く理解し、
また気遣い、支えあっているのが良く分かる。

多分、普通に生活をしていたら、まともに口をきくことも無いだろうと思われる、2
つの世代の人達が、同じスーパーのレジでとても上手くコラボレーションしている。
中高年の主婦と、女子高生といえば、“オバタリアン”と呼ばれたり、“コギャル”
と呼ばれたりして。「非常識な行動が目立つ」などとワイドショーなどで非難をされ
ていることが多い。へたをすると、世間の殆どの中高年主婦や女子高生が、皆そんな
人達ばかりかのような錯覚に陥ってしまう。

しかし、そこのスーパーでこの2つの世代の人達を見る限りでは、そんなことはほん
の一握りの人達のことで、マスコミがおもしろおかしく騒ぎ立てているだけなのだろ
うと思える。そして、こうやって世代を超えて一緒に仕事をすることが出来る人達
が、まだ沢山いるのだから。日本と言う国もそんなに捨てたもんでもないな、とも私
は思う。