少子化時代のこどもと社会:「体育祭に、もう少し配慮を」
先日、娘の中学で体育祭が行なわれた。その日は、朝から雲一つ無い快晴で、体育祭
が始まる時間には、すでにかなり気温がかなり高くなっていた。

小学校からするとかなり広い中学校の校庭には殆ど日陰の部分が無かった。一周200
mのトラックを囲んで、本部席や保護者用の観覧席などが配置されていたが、校舎の
反対側に配置された生徒用の応援席は、陽射しをさえぎってくれるものは何もなく、
特に暑そうに見えた。

体育祭が始まり改めてプログラムに目を通して驚いた。準備体操や応援合戦なども含
めた全17プログラムの内、実に7プログラムが徒競走やリレーなどの「走る」競技で
構成されていたのだ。まさに炎天下といえるこの気候の中では、いかに元気な中学生
と言えども体力的にキツイのではないかと、容易に察しがついた。

だが、実際にリレーが始まってみて、私は更に驚いた。徒競走などは、トラックを半
周分の100mで争われるのだが、一人リレーに関しては200mを走り、なんとアンカー
に至っては1周半走るのだ。つまり300mを全力疾走することになる。大人顔負けの
体格と体力で走る子ども達は、驚くほど足の早い子ばかりだった。しかし、さすがに
一周を過ぎて最後のコーナーに差し掛かったあたりで、疲れが来るのだろう。皆その
辺りでガクンとペースが落ちる。残りの数十mはかなり辛そうで、歩いているような
ペースに落ちてしまう子が何人もいた。

しかし、それも抜き抜かれつの競り合いになると様子が変わってくる。走ることに集
中しているので、ペースが余り落ちないのだ。レースとしては、その方が盛りあがり
面白いのかも知れないが、私はあまりにも無茶なのではないか?とハラハラしながら
見守っていた。

すると、予感は当たってしまった。組対抗リレーのアンカーの選手が、ゴール直前で
倒れ込んでしまったのだ。何かに躓いて転倒したのではない、余りに頑張って走りす
ぎて、貧血を起こして倒れ込んでしまったのだ。遠目で見た感じでは、意識が無いよ
うに見えた。しかし、競技中だからだろうか?先生も誰もその生徒に駆け寄ろうとは
しなかった。2位を競り合っていた彼は、倒れているうちに、かなり離していた後続
のチームに抜かれてしまったが、起き上がることができなかった。半周以上離してい
た、最後のチームがゴールした頃ようやく意識を取り戻し、フラフラと起きあがって
歩きだし、倒れ込むようにしてゴールした。

私はその一部始終を見ていて、あんなにまでして走らせる必要があるのだろうか?と
思った。いくら普段は体力が自慢の生徒だとしても、緊急事態が起こらない保障はな
い。せめて、倒れ込んでしまった時に先生が駆けよって、本人の状態を確かめるくら
いのことはしてもいいのではないだろうか?

その日の夕方、各地の高校などの体育祭で熱中症で沢山の生徒が倒れたというニュー
スが流れた。私は、昼間娘の体育祭で見た光景が重なって、背筋が寒くなる気がし
た。学校側が生徒の体力を過信しているのか、当日の状況判断がきちんとできないの
か、いずれにしても、もう少し学校側に配慮があるべきだろうと私は思う。