お守り
私は、いろいろな事務の仕事に就いてきた。その中では、ワープロなどを使っての仕事も多かったので、仕事をしながら自分のスキルを上げて来て、特に困ったことも無かったので、特に資格を取る必要も無かった。

しかし、資格という公的な証明を持っていないことで、SOHOとして踏み出そうと思った時、自分のスキルをクライアントに示すための目安がなにも無いことに気がついたのだ。

そこで、取り敢えずワープロ検定の3級から取得することにした。そして、今日がその検定の日だった。

出掛ける前に持ち物の点検をしていると、鞄のの中のストップウォッチが目に留まった。

ワープロ検定では、決められた時間の中である程度の字数の文書を入力する、という試験がある。その練習の時、私はこのストップウォッチを使って、入力時間を測っていた。

ストップウォッチのメモリーのスイッチを押すと、先週のカート練習の時の娘の出したタイムが、そのまま残っていた。そう、このストップウォッチは、子供達のラップタイムを測るために使っているものだった。

寒い日も、暑い日も、このストップウォッチは、私の手の中で子供達の頑張りを、ずっと見守ってくれていた。そして先週も…。

実際のワープロ検定の最中はストップウォッチを使うことは無いのだが、娘が体調が悪い中、頑張って走ったタイムが刻まれたままのストップウォッチを、お守り替わりにポケットに入れて、私は検定会場へ向かった。