ささやかな夢
私にはいつかまたバイクに乗りたいっていう夢がある

私がバイクに乗らなくなって、もうずいぶん経つ

昔、親の反対を押し切って取った免許なのに、なんてもったいないと思う

スタンドにで、斜めにとめてあるバイクにまたがって、そぉ〜と起こしてみる

すると、重たいはずのバイクが、ふっと軽くなるときがある

つまり、それが私とバイクの重心がひとつになった瞬間だ

すこしまえかがみになって、ハンドルをぐっと握り、エンジンをかける

自分の周りの音が、ふけ上がっていく、エンジンの音から、だんだん風の音に変わっていくころ

ヘルメットの中の私の耳には、ただ、「はあはあ」と息をする音がこだましていた

そう,私は基本的にはバイクは一人で乗るものだと思っているんだ

風にすべてを任せ、ただ走ることだけに集中できるから。

それに。あんまり誰かの後ろに乗ったことがない

でも時々、誰かの後ろに乗せてほしいと思うことがある

背中に、おでこをつけて、ヘルメット越しに会話するんだ

すると、きっと君は、「え?なに?聞こえないよ〜!」って言うだろうね?

それでいいんだ。きっと私は、ヘルメットの中で、安心して大声で泣いてると思う

きっと聞こえない振りしてくれてる君の背中に、すべてを預けて・・・