「朝の沿線」
<<インド>>--アグラ--


再び列車は走り出し、通り過ぎる村の光景が目に飛び込んでくる。

何の変哲も無い沿線の光景だが、何となく懐かしさを覚える村の佇まいなのである。

沿線の脇にはゴミの山が広がり、粗末な家や店の様子が、昔の私が少年だった頃の日本の光景とラップする。

こんな小さな店先の、駄菓子やアイスキャンデーの旗に釣られて、小遣いを握り締めて飛び込んだものである。

少年時代の夏は、絶えず裸足で走り回ったのが懐かしい。

まだ朝が早く、日の出前なので、村に人影が見えないが、朝靄に霞む地方の村の雰囲気が、一層郷愁を思わせるのであった。