小池百合子氏が世に広めた言葉に「クールビズ」がある。
小泉内閣の環境相時代に提案し、日本の夏から上着やネクタイを追い出すのに貢献した。では、こちらの古い言葉は覚えているだろうか。「省エネルック」である。
軽装が省エネに役立つとして、1970年代末に大平内閣が呼びかけた。首相や閣僚が率先して示したのは、スーツの上着を半袖にするという新奇な格好。見事な「企画倒れ」に終わった。
クールビズに限らず、キャッチフレーズを武器にするのは小池氏の持ち味で、都知事になっても変わらない。ときにカタカナ語、ときに数字を使いつつ。しかしその多くが省エネルックと同じ運命を辿りそうな気がしてならない。
1期目の公約は「七つのゼロ」で、待機児童、満員電車、都道沿いの電柱などをゼロにするというが、ほとんど達成できていない。「築地を食のテーマパークに」は一体どこに行ったのか。「東京アラート」は発動条件も効果もよく分からないものになった。
おととい再選された小池氏は「CDC(米疾病対策センター)東京版の創設」を強調した。しかし「新たな建物をつくるわけではなく---」と語っているのを聞くと、これも尻すぼみにならないかと心配になる。ひねくれすぎだろうか。
「政治家の言葉が軽くなった」とはよく言われる批判だ。小池氏の場合、政治の言葉を面白くしているのは間違いない。しかしそれらが肉付けされないまま漂って消えるなら、軽い言葉より、もっと軽い。

 天声人語より