毎冬この時期、東洋大学から「現代学生百人一首」が届く。
33回目となる今回は、小学生から大学生まで6万を超す応募があった。入選作も選に漏れた歌もかわらず伸びやかだ。
〈大国の圧に屈さぬ人々がマスクとともに自由をさけぶ〉高2福井拓己。排除されても屈しない香港デモの若者が自分と同じ世代であることに魂が揺さぶられる。〈涼しい日すぐにエアコンつける父ここにも届かぬグレダさんの声〉中2木田川優妃。環境悪化を憂えるグレタさんの言葉とはほど遠いわが家の実態である。
SNSなしでは友情も育みにくい時代を生きる。〈「おつ」「おけ」「り」スマホの会話単語だけそんなにみんないそがしいのか〉中2関谷咲。「おつ」はお疲れさま、「おけ」はOK、「り」は了解。そこまで言葉を削って、浮いた時間を何に使うの?。
自分の進む道が見えず、だれもがとまどう思春期。〈留学のポスターの前で立ち止まる夢ある友とまだない私〉高1三浦奏愛。有人と比べて焦った体験は誰にもある。「大丈夫、あわてないで」とエールを送りたい。
〈「なぜうちを?」今日はこちらがきいてみるスーツの私と巣かける燕〉大4北森葵、就職活動のめんせつで何度もとわれるこの言葉に疲弊ぎみ。黒いスーツに身を包んだ私が、今日は燕に同じ問いを放ってみる。
〈教科書に載る恋歌の乙女らと恋バナしたく五限の古典〉高3影長美咲。恋を語る相手は和泉式部か紫式部か。恋して、悩んで、笑って。若き季節は一瞬のきらめき。

 天声人語より