年末から連日のようにイラン発のニュースが続く。米軍拠点を攻撃し、矛を収めたかと思うと、またロケット弾が飛んだ。
現下の緊張状態を、日本で暮らすイラン出身者はどう感じているのだろう。
「トランプ米大統領がイランの52カ所を標的にすると発信した時、実家は大丈夫かと不安だした」。コルドバッチェ・マンスールさんは在住30年、東京・上板橋で居酒屋を営む。ふだんは陽気で冗談好きだが、「友人の妻子がウクライナ機の撃墜で犠牲になった」と肩を落とす。
店内に貼った故国の国旗には黒い喪章が添えられている。いま心配するのはミサイルの応酬だ。「右ほおをたたかれたら、左ほおをたたき返せと子どものころに教わりました。。でも軍事で報復しあっても悲劇しか生まれません」。
テヘラン駐在の記者によると、日々けんかは多い者の、収め方も実に心得たもの。ふぁふでも運転者同士でも人目をはばからず声を上げるが、他人が割って入るか、走法があきれ顔を見せ合えば、そこで幕。米国ともそんな風に決着するだろうか。
両国がお互いを敵視するようになってもう40年。親米王政が倒れ、在テヘラン米大使館人質事件をきっかけに国交が絶えた。再選を狙って武力を誇示するトランプ大統領、反政府運動を封じたいイラン政権。思惑はそれぞれあるようだが、砲弾の応酬に理などない。
「穴を掘るなら、自ら落ちる」。因果応報を説くイランのことわざだ。双方の指導者がいまこそかみしめるべき言葉である。

 天声人語より