〈初釜やいまぞ生きよと富士の土〉〈空青く子供育てし注連飾り〉。新年にふさわしい句である。詠んだのは一茶。
と言っても江戸期に活躍した俳人ではない。俳句を詠む人工知能「A I一茶くん」である。
北海道大学の川村秀憲教授が3年前に開発した。江戸から現代まで古今の名句と、季語にちなむ写真を覚えこませた。句題か写真を示すとそれに即した俳句を詠むことができる。
当初は平仮名しか使えず、俳句の体をなさなかつた。〈かおじまい つきとにげるね ばなななな〉。それでも何十万もの既存の句を学び続け、3カ月で味わい深い句を詠むようになった。〈又一つ風を尋ねてなく蛙〉。
近作には目を見張るものがある。〈強霜に日さす如し磯の人〉。驚くのはその数だ。1時間に14万もの句を作り出す。「残念ながら玉石混交です。だれか人の手を借りて選ばないと、多すぎて句会が台無しになります」と川村教授。
今回、当欄の求めで届いた新年詠は、冒頭の2句を含む3758作品。読みながら考えたのは、人間とA Iのあるべき関係のことだ。将棋で名人を打ち負かしたとか、多くの職を人から奪うとか。それでも将来、十分に共存し、助け合える領域が実はかなりあるのではないか。
〈初釜やひそかに灰の美しく〉。当方が心奪われた一茶くんの作品だ。新年の茶の湯という華やかな場で、あえて灰の美を詠む。かと思うとこんな句もある。〈パン高値眠れるに似し福寿草〉。成長が楽しみでならない。

 天声人語より