5年前の梅雨どき、さいたま市に住む女性は、東京・銀座で女性のデモを見た。
集団的自衛権の行使容認に反対する人々だった。その時の思いを俳句に詠む。<梅雨空に「九条守れ」の女性デモ>。
地元の公民館の句会で秀句に選ばれた。従来、秀句は公民館だよりで紹介されてきたのに、公民館はこの句に限って掲載を拒む。「公平中立の立場から好ましくない」という理由だった。納得がいかず、市を相手に裁判を起こした。
「思想・信条を理由にした不公平な取り扱いだった」と地裁、高裁が認める。昨年末、最高裁で確定し、句は公民館だよりの今年2月号に掲載された。「子どものころ、空襲警報が鳴って防空壕に駆け込んだ記憶は鮮明です。普通の主婦が、9丈は大事だという当たり前の気持ちを小さな句会で詠んだだけ。それが不掲載になる今の世の中が心配です」。
句歴は10年に及ぶが、<梅雨空に>は句としてはしっくり来なかったという。裁判で幾度も取り上げられ、有名になっていくのが恥ずかしかったと話す。
一連の経緯をふりかえると、行政側の事なかれ主義が浮かび上がる。憲法を守る動きとはかかわりを持たぬ方がいまは得策---。問われたのは、行政の現場に広まるそんな見当違いの「憲法アレルギー」だった。
臆せず゛に声をあげ、70代で初めて司法の場に立つ。女性の奮闘に励まされた方も多いのではないか。

 天声人語より