英語でインタビューをした時に、専門の会社にテープ起こしをお願いすることがある。
聞けばインドのムンバイに事務所があり、現地の人たちが仕事を担っているようだ。さすが英語が公用語なだけに、正確に仕上げてくれる。
そんなことが可能になったのも、インターネットのおかげである。長めの音声でも数分で送信できるし、出来上がった英文はすぐにメールで送ってくれる。便利な世の中になった。
国と国との垣根が低くなる傾向を「世界のフラット化」と名づけた米ジャーナリストもいた。政治はともかく経済は、たしかに平になってきた。しかしそれは真っ当なビジネスに限らない。タイ中部パタヤの高級住宅で、振り込め詐欺とみられるグループが摘発された。
現地警察に逮捕されたのは15人の日本人で、福岡や沖縄などの出身という。インターネットを使ったIP電話も50台以上押収された。日本にいる人にウソの請求通知を送り、電話してきた人をだましていたとみられる。
とうやって手に入れたのか、電話番号は東京の局番「03」が使われていたという。日本にいると思わせて、捜査の目を逃れる狙いだったか。コストを抑えるために、生活費の比較的安いタイが選ばれたのか。
早くて安い通信手段に、物価や賃金の低い国を組み合わせる。仕事の現場は、自国にこだわらない。そんなグローバル企業の手法が、振り込め詐欺にも当てはまるとは。奇妙な事件を扱うことになったタイ警察当局の苦労もしのばれる。

 天声人語より