子どもの虐待を食い止める最後の砦が、児童相談所である。
親のもとに置いておくと危険な場合は、職員が出向いて子どもを一時的に保護する。怒った親からすごまれ、身の危険を感じることも少なくないという。
だから保護に向かう際には、例えばこんな注意点がある。「機敏に動くためにハイヒールは履かないこと」「身動きが執り易いうにカバンは軽くすること」---。同僚の大久保真紀記者が『ルポ児童相談所』で書いている。
ときに死に至る虐待が報じられる。しかしその裏には、児相の職員が体を張り、未然に防いだ例がたくさんあるのだろう。役割への期待が高まり増員計画も今後進むという。
そんなことは自分たちには関わりがないと、確信している人たちがいるらしい。上品なお店が並ぶ東京都港区南青山に児相をつくる計画があり、周辺住民の反対で難航している。先週の説明会でも「ブランドイメージが下がる」などの声が相次いだと。
「3人の子を南青山の小学校に入れたくて家を建てた。物価が高く、学校レベルも高く、習い事をする子も多い、施設の子が来ればつらい気持ちになるのではないか」。近くに住む女性の発言である。そんな考えに共感する人が果たしてどれだけいるのだろう。
児相や児童養護施設に地元が反対する動きは、各地にあるようだ。心に壁をつくらない。そんな品の良さは出せないものか。もちろん南青山にも児相に賛成の人がいることを付け加えておきたい。

 天声人語より
保育園や幼稚園の建設に反対するのも同じような考えなのだろう。