アイスやプリン、みそ、焼酎など近年にわかに見聞きすることの増えた「安納芋」。
どこが発祥の地かと調べると種子島である。安納という集落もあるらしい。収穫の盛期に訪ねた。
サツマイモながら、掘り出された姿は丸々としてジャガイモのよう。大規模農園を経営す永浜末廣さんは「表皮が繊細で傷つきやすい。絶対に投げたり積み上げたりはしません」。まるで宝石か陶器でも扱うような手つきである。
言い伝えによれば、先の大戦で南洋のスマトラ島に送られた兵士が持ち帰ったという。安納地区で細々と育てられていたが、一転、人気に火がつく。十数年前、甘さとしっとりした食感がテレビや雑誌で紹介されたのがきっかけだ。島内の栽培面積は10倍に増え、生産者は500戸を超えた。
産地が鹿児島県外へも広がり、同じ安納芋の名で販売されるようになると、消費地では「種子島産」が埋没するようになった。「このままでは発祥の地が競争力を失う」と党内では危機感が深まった。
島の農家は、品質のばらつきをなくし、甘さを追求することに活路を見いだす。大敵は夏場の「日焼け」、色の黒ずむ「打ち身」、霜による「凍傷」だという。生身の人間と変わらない。夕張メロンや東根さくらんぼと同じように『種子島安納いも』という名を浸透させようと奮闘が続く。
焼きイモにして二つに割ってみる。南国の太陽のような黄金色が鮮やかだ。鉄砲の伝来やロケット発射基地に続く新たな島の「宝」である。

 天声人語より