「万達」 「蒙牛」 「冠益乳」 「海信」 「帝牌商務正装」。
熱戦の続くサッカーW杯ロシア大会の中継を見ていると、見慣れない社名や商品の広告が次から次へと大写しになる。
いずれ劣らぬ中国の有名企業である。万達はアジア一とも言われる富豪王健林氏の率いる不動産大手。蒙牛は乳製品メーカーで、冠益乳はその商品の一つ。海信は「ハイセンス」ブランドの家電で知られ、帝牌はスーツなどを扱うアパレル企業という。
当の中国チームはアジア予選で敗れ、本大会出場を逸した。日韓共催で沸いた2002年大会がただ一度の出場歴である。それでも今大会の広告を見る限り、コカ・コーラ、アディダスなど名だたる欧米企業をもしのぐ勢いだ。
さかのぼれば、かっては日本企業の広告がW杯のスタジアムに並んだ。日本代表が初出場する1998年より前からセイコー、キャノン、富士フイルムの広告がピッチを飾り、ついつい目で追った記憶がある。
思い出すのは、ニューヨークの繁華街タイムズスクエアの巨大広告である。大みそか恒例の越年行事で知られ、米国では野外広告の「超一等地」と呼ばれる。ビルの最上階にあった東芝の広告が先月、静かに撤去された。日本の沈滞を象徴するようでやはり一抹の寂しさを禁じえない。
とはいえ、企業活動に栄枯盛衰はつきものだ。W杯会場や観光名所に自国企業の広告が増えた減ったと一喜一憂してもしょうがない。目をピッチに戻し、日本代表の熱闘を応援するとしよう。

 天声人語より