ひょつとしたら世界最古のストローは、アシの茎だったかもしれない。そう思わせる話がスミス著『ビールの歴史』に出てくる。
古代メソポタミア文明の時代、醸造されたビールの壺を囲んで人びとが座り、アシのストローを差し込んで飲んでいたという。
共同体の行事のようなものかと想像すると微笑ましくもある。時は流れて、プラスチックのストローはありふれたものになった。お店で「ストローつけますか」と聞かれることもない。
そんな状況が問題視されている。欧州連合で、ストローなど使い捨てプラスチック製品の販売を禁止する動きが出ている。フォークや綿棒、風船につける棒なども対象になる。プラスチック製品が流れ出して世界の海を汚している事態に歯止めをかけるためという。
先日はタイで、死んだ鯨の胃袋から80枚のポリ袋が見つかったと報じられた。多くの生き物を危険にさらし、魚を食べた人間への害も懸念される。G7首脳会議では協力して対策を捕ろうと新憲章がまとまったが、日本と米国は署名しなかった。他国からの遅れは拭えない。プラスチックの量は国の発展ぶりを示すのだと業界の人から聞いたことがある。量り売りされていたものが放送されてスーパーに並ぶ。ペットボトル飲料も広がる。その便利さに、私たちは逆襲されているかのようだ。
古代メソポタミアに戻ると、裕福な人は身分を示すため黄金で飾ったアシを持参したそうだ。いわばマイストロー。意外といい習慣かもしれない。

 天声人語より