ドイツの話である。この国には外国から移り住んだ人のためのドイツ語教室が各地にある。
最低600時間の学習が、移民に義務づけられているのだ。ベルリンにある教室を訪ね、聞いてみた。なぜドイツに? 
クロアチア出身の女性は「いい暮らしができると思って」と言い、モルドバからの男性は「子どもにいい教育を受けさせたくて」と話した。難民もいる。アフガニスタンから来た男性は答えた。「イスラム過激派から戦士にさせられそうになり、逃げて来たんだ」。
ここ数年、多くの難民を受け入れたドイツの判断には驚かされた。そして現地を訪れて感じたのは、来た人を受容する構えが存在することだ。戦後、移民労働者を冷遇したことへの反省もあるのだろう。移民のルールを持つ人は今、約2割にのぼる。
「移民の経験は、きっと難民にもいかせる」と連邦議員ゲーカイ・アクデルットさんは言う。幼い頃トルコから来た彼女は移民への差別も、その後の支援の広がりも見えてきた。語学教室のほか、労組や福祉関係者など移民を支える人たちが難民の助けにもなるという。
難民の到来は逆風も生み、昨年の総選挙で反難民を掲げる政党が躍進した。それでも移民の試練を経たこの国なら、乗り越える力があるのではないか。
4年前のサッカーW杯で優勝したドイツ代表は、トルコ系や東欧系などの選手が活躍した。その様子は国の活力とも重なつて見える。今回もドイツは優勝候補の筆頭だそうだ。

 天声人語より