インベーダーゲームが大好きで、盗んだ金の大半はゲーム代に使った----。
270万円の窃盗容疑で検挙された男の話が、1979年の新聞にある。別の記事では「過熱インベーダーゲーム」の見出しで、インチキ硬貨を作ってゲーム機に入れる中高生がいると書く。
インターネットもスマホもない時代、喫茶店にテーブル代わりに置かれたゲームである。侵略者たちを迎え撃つスリルを覚えている方もおられよう。今年は誕生から40年になるそうで、東京で記念イベントも開かれている。
草創期から現在まで、ゲームの世界は目まぐるしく変わった。画面の中の戦いや冒険は、映画と見まがうほど。プロスポーツ選手のように富と名声を得る競技者も出てきた。
魅力とともに、魔力も強まっているのか。インターネットゲームなどのやり過ぎで生活に支障をきたすことがあるとして、世界保健機関が「病気」に分類する方針という。
症状として「ゲームをする衝動が止められない」「問題が起きてもゲームを続ける」などをあげる。韓国では若者が86時間没頭した末にエコノミー症候群で亡くなっている。ネット依存はアルコール依存のように、脳の働きを大きく低下させるとの研究もある。
「1杯目は健康のため、2杯目は喜び、3杯目は心地よさ、4杯目は愚かさのため」「酒の神は海の神より多くの人を溺死させた」。痛飲を戒めることわざは世界に多い。ネットやゲームのための新たな金言が、求められるところだろう。

 天声人語より