北海道大学の前身、札幌農学校の教頭クラーク博士が語った
「ボーイズ・ビー・アンビシャス」は「青年よ、大志を抱け」と訳される。しかし「若者よ、野心を持て」でもいいはずだ。大志だと高尚で縁遠い感じだが、野心ならもっと身近にならないだろうか。
作家の林真理子さんは『野心のすすめ』で、大学時代、すべての就職試験に落ちた経験を書いている。ただ者でないのは、もらった40通以上の不採用通知の束をリボンで結び、宝物にしていたことだ。きっと将来成功して、この通知を懐かしく眺める日が来ると信じていたからだという。
「今のままじぁだめだ。もっと成功したい」という野心を、林さんは車の「前輪」に例えた。努力することが「後輪」である。前輪ばかり空回りするのは見苦しいが、回っていないよりも見込みがあると述べている。
林さんの野心は大きかったようだが、小さい野心もあっていいだろう。例えば仕事で、教養で、リーダーシップで、身近なあの人に追いつきたい、肩を並べたいという気持ち。がんばれば届きそうな憧れと言ってもいいし、身近な仮想敵と呼んでもいい。
車の前輪と後輪を動かすエンジンになるのは「面白い」「大好き」「人や世の中とつながりたい」といった感性や情熱だろうか。アンビシャスであることは決して若者の独占物ではないが、本領であるのはまちがいない。
8日は成人の日。大きな野心も、小さな野心も、たぐりよせてみたい。若くても、そうでなくても。

 天声人語より