重機がせわしなく川の泥をかき出す。土砂の流れ込んだ家に人の気配はない。
そのそばで色づいた柿が収穫を待つ。7月の九州北部豪雨で被害を受けた柿の産地、福岡県朝倉市を歩いた。
柿の出荷量で福岡県は和歌山、奈良に次ぐ全国3位。例年なら9月半ば以降、品種順に西村、伊豆、早秋と出荷され、まもなく主役の富有が本番を迎えるころだ。だが今季は違う。道が寸断され、農家が畑に入れない。選果場も泥に埋まった。
「見たことのない水害。農家は70歳以上が主体で、柿はもう辞めようと弱気になった人も少なくなかった」とJA筑前あさくら災害復興対策室課長の浜崎俊充さんは話す。出荷量は災害前の7割にとどまる。
朝倉産の柿は、甘みが強い。南向きの柿畑に降り注ぐ陽光と、筑後川に注ぐ清流の恵みである。だが九州最長の川は別の顔をもつ。「山つなみ」「暴風洪水」「堤防の破壊欠潰」旧杷木町史は金正依頼、一帯を襲った水の被害を詳述する。
浜崎さんは今月ほぼ連夜、果樹農家を集めて意向を聞く。どの道を復旧するか、どの畑をあきらめるか。意気消沈していた農家も「道がつながったらまたやるばい」「あんたがするなら俺も」と前向きになってきた。
昨年は炭疽病という病気に見舞われ、今年は市史を塗り替えるほどの豪雨に襲われた。一難去ってまた一難だが、被害を免れた柿の輝きが、農家の栽培意欲に再び火をともした。秋の畑を見て回ってブランド復活の手ごたえを感じた。

 天声人語より