他社に比べ、自社の製品はこんなに優れていると訴えるのが比較広告である。
かつては行儀が悪いと言われたが、今は当たり前になった。それでも自治体が乗り出すのは珍しい。兵庫県明石市の「比較広報」である。
子育てのしやすさを数字にして、転入を呼びかける。所得に関わらず中学までの医療費が無料で、2人目以降の保育料も無料。共働きで子供が3人なら補助のない市と比べ、末っ子の中学卒業までに「合計約566万円負担減に!!」。広報誌は保険の宣伝と見まがうほどだ。
「子育て層に焦点を絞り、インセンティブとなる政策を並べて発信する。そうすれば人は明石を選ぶ」。泉市長は企業経営者のような口ぶりである。読みは当たったそうで、市の人口は増加に転じた。
小学校区ごとに子ども食堂をつくる。離婚した親が養育費を払わない場合に市が立て替えることを検討する----。
手立てを次々と講ずるのは「子どもに寄り添う社会を作るために市長になった」からだ。一方で様々な団体への補助金を減らして不評も買った。転入により待機児童が増える事態も起きた。
教育への公的な支出が、先進国の中でも際だって低い日本である。とくに幼児と大学の教育では家計からの持ち出しが多い。社会で子どもの面倒を見る方向に進むには、自治体でも国でも、少々強引なやり方が必要なのだろう。
子どもの笑顔は増えていくか。市民がそれをどう支えるか。29万人余のまちで実験が進行している。

 天声人語より