本来なら春からの新生活に、胸をふくらませるときだろう。
資格をめざして大学の推薦入試に受かったのに、お金が払えなくなり入学を取りやめた。そんな大阪府の高校生の投書が声?にあった。
「将来、私に子どもができたら同じ経験をさせたくない」との言葉がつらい。似た境遇の若者は他にもいるのではないか。日本は大学進学への支援が薄いと言われて久しい。返済のいらない給付型奨学金がようやく創設されるが、対象人数も額も十分ではない。
「福祉は社会で支える考えが広がっているのに、教育は家庭の責任のままだ」と教育社会学の濱中さんは言う。
数年前の世論調査で「優先して税金を投入すべき分野」をたずねたところ、1位が医療・介護、2位が年金で、教育は3位だった。
経済的に恵まれない人が大学教育を受けられるよう税金をさらに使ってもいいという人は、2割から3割しかいなかった。世論の後押しがなければ政策は動かない。「子の教育にお金わかけられる層と、それ以外の層との格差がますます広がらないか」と濱中さんは懸念する。
奨学金といえど後で返さなければならない貸付金が大部分で、多くは利子まで求められるのが現状である。国立大学の授業料も高くなった。学費や生活費のためバイトに明け暮れる大学生は少なくない。
消費税1%分の税収で大学授業料が全員無料になるとの試算もある。
未来の社会に向けた投資を増やす。先送りをしてはならない課題であろう。

 天声人語より