にわかに耳にするようになったアメリカ大統領令である。
日米開戦のすぐ後に出された大統領令9066号は、スパイ行為を防ぐとして、西部の日系人12万人を強制収容所へと追いやった。彼らは住み慣れた土地から引きはがされ、生活の糧を失った。
責任者の軍人は日系人全体を危険視し「ジャップはしょせんジャップだ」と述べていた。それに抵抗したのが日系2世の若者、フレッド・コレマツだった。偽名を使い、目を整形手術して逃げようとしたが逮捕された。最高裁まで争ったが、有罪は覆らなかった。
1983年になってようやく、コレマツの罪は晴れた。このときの公判で彼は訴えている。「政府に誤りを認めてほしい。人種や宗教や肌の色で、アメリカ人があのような扱いを再び受けることがないように」。
グーグル米国版の検索画面に先月末、コレマツの似顔絵が登場した。背景には桜の花と、収容所の建物があしらわれている。イスラム教徒を狙い撃ちにするような入国制限で混乱が起きるなか、日系人の悲劇を思い起こしてほしいとのメッセージだろう。
権力が不安をあおり、証拠もないのに一部の人びとを敵と見立てて排除する。いま、似たような過ちが繰り返されていないか。歴史の教訓を再び思い起こす必要がある。
亡くなる前年の2004年、コレマツは新聞に投稿している。「少数者への恐怖と偏見を呼び覚まし、誇張するのはいとも簡単なことだ」。警告がいまも有効なのが、もどかしい限りである。

 天声人語より