SМAPの解散回避。村揺るがすネット市場
日本ではタレントは多くの場合、特定の事務所に所属し、芸能活動を展開する。稼げるタレントが所属事務所にお金を落とし、稼げないタレントの食い扶持を賄う。このようなしくみを所属型システムと呼ぼう。
稼げるタレントに独立されてしまっては、事務所の存続、ひいては所属型システムが根底から揺らいでしまう。そこで、意図的か自然発生的かはともかく成立しているのが、「事務所から独立した芸能人は干される」という慣行である。
この慣行は比較的閉鎖的ないし組織化された共同体では存続しやすい。閉鎖的な共同体で「裏切り」行為をした個人は、裏切った相手だけでなく、共同体全体から「村八分」にされる。それによって「裏切り」行為を抑止する。
「村八分」という制裁は罰を与える側も拘束する。「村八分」に参加しなかった成員は、逆に村八分の対象となってしまう。そのようにして、「村」の規範は守られるのである。
SМAP解散騒動は、芸能事務所とTV局および芸能人からなる共同体が、中居正広さんらの独立を「裏切り」とみなすことで抑止力を発動し、独立を阻止した事例と解釈することができる。共同体という旧システムに属するТV局が抑止力発動に与したのは理の当然である。
また、ТVの情報番組の出演者たちが騒動に対して当たり障りのないコメントをするのも、自分が「村八分」の対象とならないための行為と見ればわかりやすい。それに対して、旧システムに属さないネット民が、こぞってそれを批判したことも理解できよう。
競争的な環境はしばしば新しいシステムの到来によってもたらせる。それは新しいメディアであるインターネット上の動画共有サイトなどが創りだした新システム。
ネット市場という新システムがマスメディア共同体という既存のシステムを揺るがし始めた。
既存の異ステムが新システムを取り込んでいくのか、既存のシステムが新システムに駆逐されていくのか。
しばらくは共同体と市場のせめぎ合いから目が離せない。

 読み解き経済より-----松井彰彦