土は寡黙ながら、私たちの食糧の大半を生み出してくれる。人間だけではない
陸域のほとんどすべての動植物を養う母である。しかし当たり前すぎるのか、ふだん意識されることは少ない。
今年が国連の「国際土壌年」ということも、あまり知られていない。生態系や農業に不可欠な土壌への理解を深めようと定められた。20世紀初頭に約16億人だった世界の人口は現在70億を超え、10年後には81億に達すると予測される。爆発的に増える命を支えているのが、ほかならぬ土壌だ。
泥鰌とは、植物を育てる力のある「生きている土」を言う。無尽蔵に思えるが、地球上の土壌すべてを集めても、地表に均して広げると厚さは約18㌢しかないとの試算もあるそうだ。心細いほど貴重品である。
<こッつん、こッつん、/打たれる土は、/よい畑になって、/よい麦生むよ>。金子みすゞの詩は牧歌的でやさしい。だが世界では、収奪農業による土壌の劣化や、開発のもたらす浸食などが後を絶たない。
科学は進んでも、人間、地球の薄皮のような土壌に頼って命をつなぐほかはない。今世紀半ばに世界の人口は100億人を超えるとされ、働き者はさらなる頑張りを求められよう。感謝しつつ、大切に守ることに思いを致したい、収穫の秋だ。

 天声人語より