英国のエリザベス女王の戴冠式は、華やかなトップニュースとして世界を巡った
父君ジョージ6世の急死とともの即位したのは前の年の2月だった。63年余が流れ、今月9日に高祖母のビクトリア女王を抜いて、在位が歴代最長となったとニュースが届いた。王室によれば、同日午後5時半ごろ、高祖母の2万3226日と16時間23分を超えたという。
かの国らしい律義さに感心する。といっても祝賀の行事は行わず、女王夫妻は当日も鉄道の開通式典に出席して公務をこなした。祝うことは高祖母の死を喜ぶことにつながる、との配慮からと伝え聞く。
そういえば、114年前のビクトリア女王の葬儀を、ロンドンに留学中の夏目漱石が見ている。大変な人波の中、下宿のあるじに肩車をしてもらったと日記に残る。「柩は白に赤を以て掩われたり」。寒い2月の土曜日のことだ。
そのビクトリア女王の享年も、89歳の元女王はすでに超えている。ダイアナ元皇太子妃の事故死の際には、冷ややかな対応が国民の批判を招いた。寒風も吹いたが、いまや広く敬愛を集め、王室支持の世論は高値安定を保つ。
この間の首相はチャーチルをはじめ12人を数えるそうだ。稀代の大輪というべきか。日本人にも親しみの深い女王である。永く延ばしていただきたい、在位の歳月だ。

 天声人語より