古代都市の栄華を今に伝えるパルミラ遺跡は美しい
パルミラの名は、紀元前1世紀ごろに史上にに現れる。交易の要衝として栄えた。東西の物品が集まっては散っていくオアシス都市だった。壮大な神殿を残す廃墟は、古代シルクロードに残る最も魅力的な遺跡と言われて久しい。
その世界遺産が、過激派組織「イスラム国」の手に落ちて最悪の事態になっている。蛮行はエスカレートし、象徴でもあるベル神殿が破壊された衛星写真が先ごろ配信された。さらに、残忍なニュースも届く。
前のパルミラ博物館長で高名な学者だったハレド・アサド氏が惨殺された。八十余年の生涯をかけて遺跡の保存に尽くした人だ。欧米のメディアによれば、捕らわれて貴重な石像物などの所在を問い詰められたが、口を割らずに拒み通したという。
日本からの調査団も再三この人にお世話になり、展覧会で来日したこともあった。遺体は遺跡で見せしめにされたという。あまりの非道に胸が痛い。
パルミラの歴史は、気高く聡明な女王ゼノビアがローマ皇帝に滅ぼされた悲劇的な物語を秘める。そのローマ軍もベル神殿は壊さなかったと、考古学者の江上波夫さんが書いていた。世界の懸念をもてあそぶように破壊と非道を誇示する集団、もはや史上の禍事である。

 天声人語より
祓詞では祓戸大神に対し「諸諸の禍事罪穢有らむをば祓へ給ひ清め給へ」と祈っ ている。