夏を告げる鳥ホトトギスは短歌や俳句で人気が高い。<ほとゝぎす二十六字は案じさせ>
短歌は三十一文字だが、ホトトギスをお題にすれば5文字は決まる。残る二十六字をさてどう作るか、というユーモアだ。
俳句ならもっと短い十七音だから、案じるのは十二音になる。よく似た「類句」ができるのは宿命だろう。いつか見た他者の句がふっと口をつく場合もあるようだ。作家の故・車谷長吉さんもそれでおわびをした。
句集の中で2句が盗作の指摘を受けた。その一つが<ふところに乳房ある憂さ秋暑し>。これには桂信子の<ふところに乳房ある憂さ梅雨ながき>が先にあった。車谷さんは「無意識の記憶」だったと2句とも訂正している。
物議をかもしていた東京五輪のエンブレムが、白紙撤回になった。他との類似などが指摘されて1カ月余り、真相はともかく、もはや国民の愛着を集める力を失った感は否めない。
シンプルな形を組み合わせるデザインは俳句と同様、類似が起きやすいのかもしれない。是と非の境目が素人には分かりにくい。デザイナーの佐野研二郎氏は模倣ではないとしつつ、五輪への悪影響を考えて取り下げを申し出たという。
新国立競技場といい、つまずき続きの五輪である。季節違いをお許しいただいて俳句で締めれば、<海に入りて生まかはらう朧月>高浜虚子。ざんぶと一度沈んで洗われて、生まれ変わって上がってくる。五輪準備もそうであれ。

 天声人語より
カバンと言い、使用イメージ図の画像転用など考えるとエンブレムも盗作に間違いがない。本人のなせる業だ。組織委員会は賠償責任が発生した場合には佐野氏に賠償させるべきだ。