エボラとイスラム国が着く古傷
エボラと別に、世界は「言葉が通じない脅威」と向き合う。「イスラム国」と称する過激組織だ。彼らも欧米に嫌な記憶を突きつける。古くは十字軍、近くはオスマン帝国分割の英仏密約、イラク戦争に至るまで、とかく身勝手で場当たりと批判される中東政策である。
「米国は世俗の独裁者サダム・フセインを葬り、混乱を残して去った。だからISは介入の落とし子だ」。ISは、第1次大戦後に欧米が引いた国境を消しにかかっている。対抗手段はイラク政府軍の増強、イランやトルコの関与など時間を要するものばかり。期待できそうな療法があるエボラ熱に比べ、ずっと複雑で厄介な相手です」
ISの膨張の陰には、中東に根強い政治的不公正、在欧ムスリムたちの生きづらさがあり、エボラ拡大の背景にはアフリカを覆う絶対的貧困がある。ISもエボラも、無からわいた悪魔ではない。欧米のキリスト教社会にすれば「身に覚えがある敵」だろう。
欧米が導き、アジアが後を追う近代文明は、自然破壊、温暖化、大量破壊兵器などの害毒を地球の隅々に散らした。幸せの偏在で不穏な空気が漂い、他者との間に鉄条網を巡らせるかの不寛容が広がる。この病んだ世界の底にテロリズムや感染症は巣くう。空爆や隔離だけではどうにもならない。

 日曜に想うより----富永 格