首相の独断 外交にツケ
安倍首相の突然の靖国神社参拝が、批判や懸念の声が世界に広がった。「失望」を表明した米国、「遺憾の念」を示したロシア、「慎重な外交」を求めた欧州連合---。日本への逆風は中国、韓国にとどまらず、国際社会で孤立感が深まっている。
「日本包囲網」瞬く間に形成された背景には、首相が靖国参拝をごく限られた側近だけと決めたことがある。情報漏れを防ぐことを優先させたため、外交当局を交えて関係国の反応を十分吟味しなかった。
安倍政権が外交の柱に掲げた日米同盟の強化は参拝を境に暗雲がたちこめた。沖縄県の米軍普天間飛行場の移設先である名護市辺野古埋立の知事承認に絡み、小野寺防衛相と米国のヘーゲル国防長官が電話協議する方向で調整が進んでいたが、都合が会わないとして急きょ中止になった。関係者は靖国参拝が影響したかはわからないと歯切れが悪い。外務、防衛両省庁に参拝するとの情報が伝わったのは当日の朝。参拝から約1時間後、小野寺氏が外務省に駆け込み、岸田外相と対応を協議する慌てぶりだった。
外交ルートで中韓に参拝を伝えるのも直前になり、ほかの国々の多くには参拝後、首相の談話を紹介し、理解を求めるのが精いっぱいだった。
参拝への批判に対し、有効な手立てを講じる動きは鈍い。首相周辺は米国の批判を当初、「在日米国大使館レベルの報道発表だ」。その後、国務省が同様の声明を破すると、政府高官は「別の言葉から『失望』に弱めたと聞いている」と語った。

 紙面より