<命綱たのむをかしさ敗戦忌>角川源義
同世代が大勢落命したのに、自分は生き延びた。いま病を得て、治療を命綱と頼んでいる。そんな我が身を突き放して眺めた句であろう。
先の戦争での日本人戦没者は軍民で約300万人。その数は戦争の末期に激増し、最後の1年で200万人近くが落命した。特攻、沖縄、空襲、原爆---悲劇の多くがこの間に起きている。
特攻隊で8月15日に出撃予定だった人の話を、読んだ。命拾いしたのだが、数日早く出撃した人もいよう。最後の1年を逆回しして玉音放送を早めてみれば、死なずにすむ人は日々増える。きょうは遅すぎた敗戦の日でもある。
「敗戦」への執着は、無謀な戦いに突き進んだ愚を忘れまいとする戦中派の心であろう。

 天声人語より