報われない努力の日々
労働白書に示されていたのは、労働生産性の上昇と実質賃金の乖離。
特に製造業を見ると、1980年から2010年までの30年間で生産性は約3倍に伸びた。
しかし、その間の実質賃金の伸びは、5割程度である。
その結果生じたのは年間の収入分布の変化だ。99年からの10年間を比較すると、年間650万円以上の割合が低下し、600万円以下が上昇している。しかも、かつての企業は賃金の「世間並み」という発想があったが、もはやそれもない。ひたすら賃金を節約するという姿勢になっている。努力しても報われない社会が到来したということである。
その間大きく変化したのは、企業部門における貯蓄投資バランスである。つまり利益を賃金にも配当にも投資にも回さず、ひたすら貯蓄するという経営へと転換したのだ。それは健全なことだろうか。
此処の企業の経営者にとっては「安全運転」のつもりだろうが、起業家精神の衰退といわれても仕方があるまい。
一部の企業に、安倍内閣の要請によって賃金を上げる動きがあるが、全体としての動きは鈍い。労組にも、「世間並み」の空気を自分たちでつくる、という気概は見えない。
「貯蓄ではなく配当を」と主張しない株主たちもまた穏やかなものである。かつてのハゲタカファンドはいささか問題があったが、いまはおとなしすぎよう。
結果、幸せなのは経営者である。従業員は報われない努力をし、株主は黙る中で、ひたすら「安全運転」の日々である。

 経済気象台より---遠雷