鳴らしそこねた祝砲ほど惨めで気まずいものはない。
人工衛星と称する北朝鮮のミサイルだ。金日成生誕100年と孫の跡目を祝し、
はるかフィリピン沖まで「長距離の弾道」を描くはずが、爆発して韓国近海に落
ちてしまった。乾杯のグラスが砕け散るように。外国メディアを招いた手前か、
当局は「衛星は軌道に乗らなかった」と不首尾を認めた。第一書記と国防第一委
員長になった金正恩氏はその夕、先代の巨像の除幕式で、何事もなかったように
手を振っている。飢える民をよそに、なけなしの金がまた浪費された。約700億円
とされるミサイルの費用は、年間輸出の半分強にあたり、食料不足の3年分を賄
える額という。米国からの支援もご破算となった。
こくないでは「軍事の天才」と宣伝される正恩氏のこと、赤恥を埋め合わせるた
め、次は核実験に及ぶという観測もある。やけのやんぱち、打ち上げがだめなら
仕掛け花火で、という了見だろうか。
なにせ核なしでは、しがない独裁国である。核爆弾を米本土まで飛ばせる技術を
示さぬことには、外交カードがない。かくして暴走する金王朝に、外から何を言
っても空しい。空腹の恨みから立ち上がる勇気と、それを束ねる傑物の登場を待
ちたい。
わが政府の対応もおばつかなかった。発射45分後の発表では防空の用をなさな
い。「成功」ならとうに領空を過ぎている。冬の花火にも似て、上げるも待つも
寒々しいミサイル失敗の巻。間の抜けたものを内外で見せられた。

 天声人語より