3・11の衝撃 9・11しのぐ文明への影響(どうして11日なのだろう)
10年前の9・11のテロリストたちに乗っ取られたジェット機が世界一の巨
大ビル2棟に相次いで突っ込み、無残に崩壊させたあの情景は誰しも忘れま
い。その2週間後、厚い灰に覆われてなお異臭の漂うニューヨークの現場を
訪れた私には、やはり言葉がなかった。テロと天災という違いはあるが、今
度もCG映像かと見まごうようなテレビの画面が世界に衝撃を広げた点でよ
く似ている。
ともに、その日から世界が変わってしまったような歴史の境目でもあった。
それにしても、いったい日本はどうなってしまうのだろう。
被災地の復興は容易でないうえ、最悪のケースを免れても福島第一原発の周
辺が放射能の汚染から脱却するには年月を要するだろう。農業や漁業はどう
なるか。電力不足も慢性化し、産業への打撃は避けられない。経済の低迷は
いっそう進み、膨大な赤字をかかえた財政も破綻しないか。
東京への一極集中に対する不安も膨らんだ。直下型や東南海地震が起きたら
大混乱は計り知れまい。どれもこれも、切実さが人々の胸に突き刺さる。
戦後の廃墟から国を再建した日本の力は信じたいが、あのときは占領体制の
下で強引な改革からスタートできた。ベビーブームの活力もあり、人口はど
んどん増えた。いまはまったく事情が違う。
事態の重さに比べ日本の政治はあまりに心もとない。強いリーダーシップを
もてぬまま首相がすぐに代わり、民主党への政権交代も力不足と党内抗争で
期待を裏切った。野党の自民党は衆参ねじれ国会の中で閣僚の首を次々にと
り、政権を弱体化させては喜ぶ有り様。そして、こうした軽い政治を許して
きたのは我々の社会だった。
いま、危機の指揮を執る菅首相への不満や批判が強まる一方、自民党との大
連立が現実味を帯びつつある。9・11とは違って戦争になるわけではないし
、世界中の支援もありがたい。だが、戦時にも似た非常事態とあれば、政治
の安定を考えて思い切った決断があってもよいだろう。
政治のもつ本来の重さに政治家も社会もいよいよ目覚める時なのだ。首相も
与野党のリーダーたちも、まずは虚心になって最善の道を考えてほしい。
皆が必死になって危機と取り組むことで、ヤウな政治を鍛えていくしかある
まい。それてなければ、3・11後の日本に希望はない。

 ザ・コラムより----若宮啓文