金融危機と保護主義--その一
景気と雇用の悪化に浮き足立って、市場経済の原則をゆるがせにすることは
避けねばならない。不況の原因を外国に求め、問題の本質から目をそらす動
きが、国内で強まっていないだろうか。
「米主導のグローバル経済が間違っていた」「新自由主義は終焉し、新しい
経済原理が必要だ」という議論。さらに雇用格差や派遣切りなど国内の労働
者の苦境の原因を、中国やインドなどの低賃金国はじめ外国に求める意見も
ある。これには注意が必要だ。
古今東西、「雇用を守れ」という声が保護主義の大きな原動力となってきた
。外国を排除して国内労働者を守ろうとする保護主義は世界貿易を縮小させ
、結局、国内の雇用をさらに悪化させる。
いまの日本の雇用問題の中で、最も重大な要因は、外国ではない。社会的な
怨嗟を高めているのは、国内の非正規労働者への労働制度上の不当な扱いで
あろう。
非正規労働者への雇用保険が非常に貧弱なのは、雇用のセーフティーネット
が、いまも正社員中心の考えからできているからだ。
これらは本来、国内の労働関係制度の改革によって解決すべき問題だ。行政
・経営・労働者の間での厳しい利害調整や、さらに言えば「正社員vs非正社
員」の利害調整が必要なのだ。
外国を悪者にする議論は、国内の政労使の一体感を高めるかもしれないが、
本来必要な利害調整の努力を棚上げする口実になってしまう。外国やグロー
バル経済を悪役にするだけでは、雇用問題はさらに悪化していくだけだ。

 けいざいノートより---小林慶一郎