経済のグローバル化について人々が抱く二つの悪夢は、ただちに誤りだと証明できるようなもではない。
グローバル化に関する悪夢は、中国やインドの低コストの競争者の規模が大
きくなって力をつけ、富裕国における雇用と所得が打撃を受けるということ
である。この悪夢の困ったところは、短期的にはいくらかの真実を含んでい
ることである。しかし、職をなくした人や給料が上がらない人に、長期的に
はうまくいくよと言っても意味がない。人はまず短期的に仕事を必要として
いるのだから。
米国では2008年に新大統領と新しい議会を選出しなくてはならない。だから
、保護主義を求める声や、中国の「不正競争」や工場の海外移転を進める企
業への強い規制を望む声は、米国選挙の安芝居には必ず登場する。経済は好
調なのに、近年、所得が伸びない人々がたくさんいるので、みんなが来年は
保護主義の強い選挙戦を予測している。
さてところが、米国自身の不動産市場に端を発する金融市場の混乱は、二つ
の悪夢の同時発生を心配させている。政治家は、中国人労働者が米国人の仕
事を奪っていると主張しては中国資本の自由な金融市場への出入りを嘆くだ
ろう。他国の政治家も同じ考えを持つかもしれない。

 世界を読むより--ビル・エモット