雪 凍 夜 5(透子)
真っ白い透明な 空間
前も後ろも上も下もない 

「 どくん 」

悲鳴にも似た鼓動が聞こえた

あたし を 呼んでいるのは 誰?

無音の世界に居た あたしに

音 を 聞かせたのは 誰?

吸い寄せられるやうに 
導かれるやうに


  「 此処 」 に たどり着いた。


  深い深い 穴 の 底

  どくんどくんと 鼓動 が 聞こえる


  す~っと傍に寄って 

  「 どくん 」

  「 どくん 」


  君は あたしの あの人ですか?

  「 どくん 」
 
  「 どくん 」


  ゆるやかな球体の膜が ヒトツ処薄くなる

  体内に取り込む 

  「 どくん 」

  「 どくん 」


  透子 は 感じていた

  本体全身で 感じていた

  生きる と いう 本能 を

  体内に取り込み 受容するかのやうに

  蒼白い球体が

  真っ赤に染まってゆく


  透子 は 叫んだ

  取り込んだ 誰か を 包み込むやうに

  其れと同時に

  雪 凍 夜 に

  叫び声 が 木霊 した。。。


  深い深い 穴 の 入り口に

  木々にかぶさった雪が

  舞い降りていた