韓国大統領を追い込んだ怒り。王朝時代を思わせる展開に。
朴大統領とチェ・スンシル被告をめぐるスキャンダルは、韓国ドラマの制作者でも思いつかない劇的な展開です。韓国社会は序列が重要ですが、そのトップの大統領が、怪しげな友人の「操り人形」になり、最後は「辞意表明」という形で転落することになりました。
取り巻きの欲の強さは、あまりに下品でした。自分たちが選んだ大統領のぶざまな姿を見せつけられ、人々は情けなくなり、そして裏切られたという思いでいっばいでした。
韓国の若者にとって大きな圧力になっているのは、競争が激しい大学入試と男子の徴兵制です。ここに不正があると、父母の世代も含め激しく反発します。チェ被告の娘の名門女子大学への不正入学疑惑は、火に油を注ぎました。週末のデモには、家族連れで参加し、大学生だけでなく制服の高校生や中学生の姿も見られました。韓国人の感情に訴える韓流ドラマで外せないポイントが二つあります。まずは、序列の厳しい社会で、下から成りあがること。チェ被告は、かって朴正熙大統領に取り入った父親から2代にわたって上り詰めました。
もう一つは、生まれながら何不自由ない暮らしをする特権層が転落する設定です。特権層のトップである朴大統領とともにチェ被告は転落してゆくわけで、見事に二つの要素が展開されていのす。
歴史をひもとけば、14世紀末から500年余り続いた朝鮮王朝では、幼い王やその側近に、母や祖母が「ああしろ、こうしろ」と背後から指示することがあります。まるで女帝のように権威をふるい、国政が大変、乱れました。今回も大統領府にチェ被告という「影の女帝」がいたわけで、王朝時代を彷彿とさせます。
チェ被告には霊的な力があって、朴大統領が取り込まれたといううわさがあります。
韓国では、特に女性たちが、ムーダンと呼ばれる巫女に、子どもの就職がうまくいかないとか、息子夫婦に子どもができないとか言った身近な悩みをよく相談島す。済州島出身の私の母もそうでした。それが生活の一部です。
大統領が同じことをしても不思議ではありません。
最近の韓流ドラマは、ネタが尽きて行き詰まっていたように見えます。そこで起きた疑惑。ブランド好きの主人公、うんくさい側近、財閥への無心、金持ちのスポーツである馬術選手の娘、大学入試の不正----スキャンダルの奇想天外な展開にドラマ制作者が一番、色めき立っているのではないでしょうか。
大統領の辞意表明でこの劇場に幕が下りるのか、それとも土壇場でさらなるどんでん返しがあるのか。国民は見守っています。

 康 熙奉・作家